なろうと中世ヨーロッパ

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中世ヨーロッパ的世界を舞台とした小説作成のための参考資料と小説レビューを記事にしています!

ヨーロッパのお城と王様の住居

 

今回は中世ヨーロッパのお城と王侯貴族の住居についてまとめていきたいと思います。

 

 

 

 

 

王様が住むところ

日本で西洋の王様が住むところといえば、まずイメージされるのがノイシュバンシュタイン城のようなもの(いわゆるシンデレラ城)だと思います。

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引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ノイシュヴァンシュタイン城

 

これはディズニー映画の影響も大きく、『シンデレラ』や『眠れる森の美女』、近年では『アナと雪の女王』など人気作品で王族が住居にしていることが多いからだと思われます。

実際に西洋文化に触れられる機会の少ない日本では仕方ないのかもしれません。

しかし、上記画像のノイシュヴァンシュタイン城は建設開始が1869年、シンデレラ(ディズニー)の放映は1950年、と、このような外見的に優美な城は多くの場合、近現代に姿を現しました。

そこで今回は、本当は中世王侯貴族はどのような場所で生活していたのか?ということに焦点を当てていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 中世の城

中世ヨーロッパにおいて城とは防衛施設でした。

そのほとんどが丘陵や河川などに沿って作られ外敵の侵入を防いでいました。

その構造は時期や地域によって様々でしたが、一般的な石造りの城は同一のパーツによって構成されていました。

 

一般的な城のパーツは以下の通りです。

 

城の基本的パーツ

  1. 塔………見張り台、捕虜の収容、食料(穀物)の保管庫
  2. 館………城の主人や使用人の住居、城の本体
  3. 城壁……侵入者を拒むための壁
  4. 門塔……門番の詰め所
  5. 堀………水の張られたものもあったが城により様々
  6. 跳ね橋…城への外からの唯一の通路。跳ね橋を上げてしまえば進入路はなくなる

 

 

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引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァンセンヌ城

 

上の写真は百年戦争の最中の14世紀から15世紀フランスに建設されたヴァンセンヌ城です。

フランス王の城のため、かなり大規模な城ですが本城を城壁が囲む典型的な城と言えるでしょう。

何度も補修が重ねられ、現在も観光することができます。

 

騎士や中小貴族はこのような城の館を基本的な拠点とし生活していました。

貴族の生活は、肉や魚の塩漬けが食卓に並んだり、年に数回体を湯で洗うなど、当時の基準では城壁の外に住む農民などに比べて裕福な生活(中世ヨーロッパの庶民の生活については別ページにまとめたいと思います)をしていました。

しかし、それはあくまでも当時の基準の話であり、トコジラミの沸くベッドや掘りへ垂れ流しになっていた糞尿など、現代の基準でみるとあまり良い環境とは言えませんでした。

また、フランス王や大領を治める領主などになると、このような城や次項の城塞都市など複数持ち、戦場にあわせて生涯を通してそれらの拠点を移動していました。

そのため、大きな領地を持つ王侯貴族は近代に入るまで1つの土地に長期間定住することはほとんどありませんでした

 

 

 

 

城塞都市 

古代から中世にかけてヨーロッパではローマ帝国末期の争いやヴァイキングの略奪、中世中期から後期にかけては諸国の戦争から諸都市を守るためにその周辺に城壁と堀が作られました。

基本的な城塞都市を構成するパーツは城と同様でした。

 

城塞都市の基本パーツ

  1. 城壁……都市の規模に合わせ2重になっている場合もあった
  2. 門塔
  3. 跳ね橋 

 

 

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引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/カルカソンヌ

 

 写真はフランス南部にある城塞都市カルカソンヌです。

カルカソンヌは時期により様々な領主の統治下におかれた城塞都市で、2重の城壁で守られており、また領主の城も都市の一部に組み込まれています。

 

 

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上記画像はカルカソンヌとは別の城塞都市ですが、領主の治める城塞都市はこのように領主の住む城と城塞都市が一体となっていた場合が多かったようです。

領主や騎士、その使用人は城に住み、街の中には職人や商人が住んでいました。

 

一方で領主の支配下にない城塞都市もありました。

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引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/モン・サン=ミシェル

 その一つがモン・サン=ミシェルです。

モン・サン=ミシェルはフランス西海岸の小島にそびえる修道院で都市と呼ぶには小規模ですが島内には民家もあり、海は天然の城壁を形成しています。

実際に百年戦争の際にはその海を盾にイングランド軍の猛攻を凌ぎました。

このような領主ではなく修道会や教会が直接治める都市も中世には存在し、そのような都市には領主の城はない場合もありました。

 

要塞都市としてはモン・サン=ミシェルは少し特殊な事例になってしまいますが、その知名度から例として挙げさせていただきました。

 

 また、ミラノやフランドルなど自治権を持つ自由都市もありましたが、そういった自由都市では領主が支配した過去があり、城塞都市に城がある場合が多いです。

下の写真はミラノにあるスフェルツェスコ城です。

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引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/スフェルツェスコ城

 

 

おわりに

中世ヨーロッパのお城と王侯貴族の住居についてまとめみました。

王様の住居は確かに城でした。

しかし、それは近現代に建設された絢爛豪華な城ではなく、外敵からの防衛を目的とした防衛施設としての城であり、そこでの生活も当時の価値観では十分に裕福なものでしたが現代の価値観では貧しいものでした。

また、大領を治める領主はその所領に複数の城や城塞都市を持ち、防衛のため生涯を通して移動し定住することはありませんでした。

以上です。説明不足や間違いなどあればコメントに残していただけると幸いです。